第2章『接触』
私は彼らを見た驚きで言葉を失った。 時間にしたらほんのわずの間、 お互いが観察しあった。
しかし後から思うと、 私たち人類は、いや彼らも人類と呼べるのかもしれないが、 彼らは身を潜め、私たちが思う人類より先に、 この地球に存在していたのかも知れない。
なら、観察したのは私だけだったと言える。 私たちのことは、とっくに分っていたのだろうと思う。 私たちは、人類が誕生し、 我が物顔で地球を自分たちのものだと思い込み、 私たちの他に知能を持ち、 知識がある生物はいないと思い込んでいたのである。
彼らは、これまで密かに目立たず、私たちと共に この地球という星で共存してきたのだ。
だが、何か問題がおきたのだ。 彼らは何か事情があってわれわれの前に現れたのだ。
近くの道路で、車のクラクションが鳴った。 ふと、我に返り しばらくの間驚きと好奇心に戸惑ったものの、 まず、何か話さなくてはと思った。
しかし、何語を話せば通じるのだろう?
取りあえず、日本語で
『こんにちは』 『日本語は話せますか?』
しばらくの沈黙の後、聞き取れない大きさで 数名が輪になって話し合っている。
まるで人間と同じ行動をした事で、 なぜか私に危害を加えることはしないだろうと思った。
よく観察すると、見た目では分りにくいのだが、 明らかにリーダーが一人いて、 話を仕切っているように見える。
数回のうなずきがあった後、こちらに向き直り、 すごく小さな声で
『こんにちは』
日本語が話せるらしい。
『私たちは住むところを失った』
すごく集中しないと聞き取れないぐらいの大きさなのだが 確かに彼らは日本語を話し、 そして、住むところを失ったと言ったのだ。
私は、何の警戒もせずにとっさに、 『日本語が話せるのですね』 と話しかけ、彼らの言った言葉の意味を理解しようとしなかった。
また繰り返し
『私たちは住むところを失った』 『責任はお前たちにある、われわれにとっては深刻な問題だ』 『すぐに問題を解決しろ』 『われわれには、時間が無い』
と彼らのリーダーは怒るでもなく、穏やかな表情で話した。
私は、どうしたら良いのか分らず、
『取り合えず、ここではなんですので、お店にお入りください』 『あなた方の問題を、中でお聞きします』
数人の彼らは、特に警戒するでもなく、 私の後に続き、zuiunの店内に入ってきた。
続く・・・
by fowl
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